製造 - PRODUCTION

デンマークの国土に対する森林の面積はたった15%ほど。日本の70%と比べるととても少ないのです。ですが、森林の利用率は日本の4割に対して7割と、とても多いのです。北海油田が領土内に見つかった1960年代以前、デンマークは日本と同じで天然資源がとても少ない国でした。唯一ある天然資源である木は人々の生活を支え、日照時間が少なく、作物があまり育たないひ弱な土で生活するデンマークの人々はそんな木に感謝しながら生きていました。

唯一あった天然資源の木を加工する技術が自然が高くなったのも頷けます。

その木工の技術を造船技術に生かしデンマーク人はバイキングとなり北欧の海洋貿易を支えるようなります。

イギリスから始まった産業革命に乗り遅れたデンマークの木工は他のヨーロッパ諸国とは違う道を歩むこととなります。機械加工に頼るのではなく、手加工が主になり、その手加工を補完する形で機械を利用するというデンマーク独自の手法が主流となりました。この手法はデンマーク家具が他の国の家具とは一線を画す大きな理由となりました。産業革命に乗り遅れたことがかえって、デンマークの家具作りをよりユニークにし、そして唯一無二の作品が生まれる土壌を作ったということは皮肉なことかもしれません。

針葉樹がほとんどの私たちの周りとは違い、デンマークには沢山の広葉樹があります。ホワイトオーク、ビーチ、ホワイトアッシュ等です。日本のように使える木のほとんどが山の斜面にある国ではなく、一番高い山の標高が200mにも満たない地形を持つデンマークにある木のほとんどは平地にあります。人の生活圏にとても近い場所に使える木があるのです。

その人間の何倍ものサイズがある木はトラックで近隣の製材所に運び込まれます。

身近にある木を使うことはデンマークに住む者にとっては当たり前のことです。ですが、日本と同じで木の加工となると、コストが安い第三国に任せるといったことが当たり前に行われるようになりました。

デンマーク国内の家具加工技術の高さは誰もが認めるところです。それを捨てて、第三国で生産することは、もちろん多くの消費者が考える適正価格を守る上では必要なことかもしれません。ただ、なんとなく違うんじゃないと思い始めている人はずっと昔から、デンマークにも日本にも沢山いると思います。

シバスト・ファニチャーが産声を上げた1908年、家具加工が第三国に移行していくなんて誰も予想していなかったと思います。
住んでいる近くで採れた木を精一杯のアイディアと技術で製材し、近くに住んでいる人、自分の家族、そして自分自身にとってどんな家具がいいのだろうかと時間をかけ考え、独自の方法で家具作りをしていた時代です。身近にある素材を使い、そして身近にいる人達のためにと思った家具作りが、産業革命に乗り遅れたことと相まって、デンマークの家具作りは世界に類を見ない独自なものとなって成長しました。

シバスト・ファニチャーの材料、加工、梱包/発送は沢山のデンマークに住む人達によって支えられています。
デンマークで生まれ、あるいは流れ着き、そこで家族を持ち、仕事に従事し、そして生活をしている人達です。

デンマークにある材料からデンマークで生活する人達が作る家具がシバスト・ファニチャーです。

1908年に始まった時と変わっていません。デンマークで作り続けること、競争社会の中の今の時代ではとても難しいことかもしれません。ですがそのことを大切だと思い、守り続けたいと思っている人達がシバスト・ファニチャーを支えてくれています。

この人達の支えがなかったらシバスト・ファニチャーの復刻はありませんでした。
偉大なデザインが家族に残こされ、それを支える人達がデンマークにいてくれたからこそシバスト・ファニチャーを復刻することができました。

シバスト・ファニチャーを復刻しようと考え始めていた当時のディトレブ・シバストとその妻のアナ・シバストは創業者のヘルゲ・シバスト(ディトレブの祖父)が工房で日々考えていたことと同じ考え方を持つ多くの木工職人がまだこの国に残っていること知り、ブランド復刻に踏み切りました。

ただ単に形を模しただけの復刻ではありません。デンマークに、そして当時シバスト・ファニチャーに脈々と流れていたデンマーク木工職人の誇りが、その魂が宿っている復刻です。

復刻をさせたディトレブ・シバストの母も創業者のヘルゲ・シバストと同じく木工職人です。そして、ずっと父のもと、職人として工房で仕事をしていました。ディトレブが復刻を決意した2012年頃には、1984年に自社工場を手放しているシバスト・ファニチャーには自社で製品を作る力は残っていませんでした。そこで、ヘルゲ・シバストの娘である自分の母に相談をしました。シバスト・ファニチャーの復刻の思いをそのまま理解できる工房があると紹介されたのが、現在製造をお願いしているデンマーク郊外、オーデンセからほど近くにある工房です。

大きな製造メーカーが持つような大掛かりな製造ラインはこの工房には存在していません。機械加工された部品をひとつひとつすべて手で組み付け、丁寧に完成品にしていきます。No.8等、手の込んだ機械加工、そして組み付けが要求される椅子に対して、情熱をもって果敢にチャレンジしてくれています。皆様の手に届くお品はすべて、彼が組み付けています。ですので、1日の製造数は限られています。多くの工員で、多くの設備で作ることによって生産数は上がりますが、そのための固定費を償却するほどシバスト・ファニチャーは大きくありません。また、多くの人、そして多くの設備からの費用は販売価格にも影響を与えます。椅子のデザインの複雑さにもかかわらず、現在の価格でご提供できているのは、できるだけ多くの機械加工を入れ、少ない人数、そして設備で、限られた生産数しかな作らないからです。

デンマークで採れる材料から、デンマークで生活する人達によって丁寧に作る。このことは創業以来、復刻した今でも何も変わっていません。